飛び石(石はね)の原因は?『慣性の法則』を唱えることはおかしい!
ダンプやトラックの飛び石(石はね)の仕組みは?
ダンプの荷台にある、土砂や砂利の石が飛んできて、後方車両などに損傷を与える事故があります。
この飛び石(石はね)の仕組み、石が飛んでくるメカニズムを、ご説明しましょう。
飛び石(石はね)の原因は、以下の3つのメカニズムが存在します。
1、<荷台の上にも、風が吹いている>
ダンプは、高速道路であれば時速80kmほどで走行しています。
そして、土砂や砂利のある荷台にも、時速80kmの風が吹いています。
更に気象条件によっては、地上を吹く風の速度もこれに加わります。
また、自動車の周囲には、自動車が走行する事により、自動車後方の空気密度が薄くなり、空気密度の薄い自動車後方へ向けて、自動車の前方から流れて来た空気が渦を巻くように複雑な気流をつくります。
荷台から落ちた”土砂や砂利”は、自動車周辺の激しい気流に巻かれて、風圧で自動車の周囲に飛びます。
2、<ダンプの後輪タイヤが跳ね上げる>
ダンプの荷台から落ちた小石が、ダンプ周辺に発生した気流によって、ダンプの後輪周辺に落下して転がり、この小石がダンプの後輪によって、跳ね上げられ飛ばされます。
3、<遠心力で飛ばされる>
ダンプやトラックの後輪タイヤの溝、あるいはダブルタイヤの間に挟まった小石が、走行して回転する後輪タイヤの遠心力により飛ばされます。
タイヤの溝に挟まったり、後輪のダブルタイヤ(ダンプやトラックは荷台重量が重いので、二本のタイヤをペアにして使用する)の間に挟まった小石は、タイヤを水洗いした位では除去出来ず、マイナスドライバーでこじる様にして除去しなければ取り除く事が出来ません。
この様な小石がタイヤに挟まった状態で、高速道路等に入ると、タイヤの溝に挟まった小石が”遠心力”で溝から飛び出し飛ばされるます。
『慣性の法則』という、おかしな理論がまかり通っている、最近の判例
これは”科学”を、よくご存知ない方が、言った理論であると思われます。
或は、損害保険会社が保険金を払いたく無い一心で考えた”屁理屈”でしょう。
飛び石(石はね)の事故の判例で、必ず登場する『慣性の法則』の事です。
判例では、保険会社側が「ダンプやトラックの飛び石(石はね)は、”慣性の法則”により、後方には飛ばない。」という理論を唱えています。
実際に、後方車のドライブレコーダーに、前方から飛んでくる石が映っていても、”慣性の法則”を持ち出して、「小石は飛んで行かない。」と言い張るのです。空中を飛ぶ小石がビデオに映って居ても、「あれは小石では無い。」と言い張ります。
映像でしっかりと石は当たっているのに、とにかく、一円も保険金を支払いたくないという、保険会社の往生際の悪さが露呈しています。
そもそも『慣性の法則』とは、月面のような、真空の中で起こりうる現象を言います。
保険会社が「慣性の法則があるから、ダンプの荷台から小石が落ちても、周囲の車にはぶつからない。」と言う意味は、わかりやすく説明すると、以下の様な理屈です。
「ダンプの荷台の上の土砂や砂利は、ダンプと同じ方向に移動している訳だから、小石がダンプの荷台から落ちた場合、その小石は地球の重力も空気抵抗もなければ、トラックと同じ速度で、かつ同じ方向に空中を飛び続ける。
これが、慣性の法則である訳だが、実際には、「地球の重力があるので、ダンプと同じ方向、同じ速度で空中に飛び出した小石は、放物線を描きながら地面に落下し、その落下地点はダンプの荷台の下辺りに落下する。」と言う理論です。
ところが、これは大気の存在しない”月面の高速道路”の様な場所での現象を説明したもので、大気のある地球上では、大きな空気抵抗や、走行する自動車によって生ずる複雑な気流の影響で、この様にはなりません。
また、高速道路を走行する自動車の周囲に生じる、”気流”や”空気抵抗”は想像を絶する強さがあります。
皆さんは、お行儀が良いので経験は無いと思いますが、鑑定人は学生の時、頻繁に車の窓から”空き缶”や”ゴミ”を外に捨てた経験があります。
もし、保険会社が言う様に”慣性の法則”が作用するならば、窓から捨てた”空き缶”や”ゴミ”は、走行中の車の運転席の窓の下に落ちるはずです。しかし、何回もこの様な”イケナイ実験”をしてみても、ポイ捨てした”空き缶”や”ゴミ”は運転席の窓の下に落ちる経験をした事がないのです。
では、実際はどうなるかと言うと、”空き缶”や”ゴミ”が手から離れた瞬間に宙を舞い、車体後方にあっと言う間に飛ばされてしまいます。そこには、保険会社の大好きな”慣性の法則”も働きますが、それ以上に”風圧”(空気抵抗)の方が大きく関与して居るのです。
”風圧”(空気抵抗)と言うものの力は、想像以上に大きく、滑走路を走り、翼に風圧を受けた飛行機が、風圧によって生じた”揚力”によって、離陸する現象は誰でもご存知と思います。
保険会社は、地球上の大気の空気抵抗を、全く無視して、ダンプが恰も”月面の高速道路を走行”して居るかの様な驚くべき論理を展開し、「飛び石(石はね)は、慣性の法則で起こり得ない。」と結論づけて居る訳です。そして、この絵空事の様な誤った論理に、弁護士も裁判官も気が付かず、「何を言っているのか理解出来ない。」訳です。
今まで、この絵空事の論理に、誰も真面目に反論しなかったし、反論の手段がわからなかった為に、「飛び石(石はね)は、慣性の法則で起こり得ない。」という馬鹿げた判例が生まれたのです。
”飛び石(石はね)”の起きるメカニズムは、学問的には非常に複雑な部分が多いです。
高速道路を時速80kmで走行するダンプが居たとしましょう。そして、そのダンプの荷台には、気象状況が無風状態であっても、ダンプの走行速度と同じ時速80kmの風が吹きます。これは、小石ならば十分に吹き飛ばせるほどの風圧です。
そして、この小石がダンプの荷台後方から落下したとします。
先ほども説明した通り、ダンプが前に走る事によって、ダンプ後方の気圧が下がり、そこにダンプ前方からの気流が流れ込みます。この時、ダンプ後方では左右から渦を巻く様に空気が流れて居ます。ダンプの荷台後方から落下した小石は、この複雑な風の影響を受ける事になります。更に、小石の表面形状は凸凹なので、ダンプ荷台落下時の摩擦や空気抵抗で、小石が回転する様な動きをするはずです。
つまり、この様な不定形の小石が、ダンプの荷台の上から風圧で吹き飛ばされた後、どの様な動きをするかを計算で予測する事さえ出来ないのです。
更に、この小石が道路に落下した場合、道路のアスファルト表面にもアスファルトに混ぜられた砂利が並びますから、平らな表面形状では無く、凸凹な訳です。
この凸凹の道路上に凸凹の表面の小石が、回転をしながら落下した場合、どの様な弾み方をするかなど、誰にも予測すら出来ません。
ところが、裁判の資料を見ますと、小石が道路に落ちた場合の”反発係数”等を持ち出して、如何にも科学的な解析をして居る様に見えますが、「計算で出る訳の無い詐欺解析。」と言わざるを得ません。
この事をもう少しわかりやすく説明すると、「10mの高さから平らな地面に回転しないサッカーボールを落としたら3m弾む事は予測出来ても、10mの高さから凸凹の地面に回転するラグビーボールを落としたら、何m弾むかも、どこに転がるかも、全く予想出来ない。」と言う事と同じ事です。
”飛び石(石はね)”の原因は、”風圧”(空気抵抗)だけによるものではありません。上記で説明した様に、風圧で落下した小石が自動車の周囲に発生する複雑な気流によって、後輪付近に入り込み、これが巻き上げられて飛ぶ事もあるし、
荷台からの小石の落下とは、全く関係が無く、ダンプやトラックの後輪タイヤの溝や、後輪のダブルタイヤの間に挟まって居た小石が、ダンプやトラックが高速道路に入り、次第に速度を上げる内に、これらの小石に遠心力が働き、遠心力によって小石が飛び出すメカニズムだってあります。
また、スタッドレスタイヤに飛び石(石はね)が多いのは、タイヤが柔らかいため、小石が挟まりやすいからです。
ほとんどの”飛び石(石はね)”は、この”遠心力”によるものが多いです。
”飛び石(石はね)”の原因は、「遠心力で小石が飛び出したもの。」がほとんどで、ダンプの荷台からの小石の落下の場合は、よほどダンプに接近しない限り、なかなか起こらないものです。
少なくとも、保険会社が言う様に、「慣性の法則で飛び石(石はね)は起きない。」との主張は、全くのお笑いも良いところなのです。
保険会社は”慣性の法則”を、”保険金を支払わなくて済む手段”として、使っているのです。
「小石は飛んで行かない」と言う屁理屈を押し付けるのに、都合が良いのです。
保険会社の”慣性の法則"の認識は、間違ったものですが、理系分野に弱い、文系の裁判官や弁護士たちを煙に巻く手段として、大変、都合が良かったわけです。裁判官も弁護士も、保険会社のに小馬鹿にされて居る事に早く気が付いてください。
”慣性の法則”を主張し続ける保険会社側の、悪質さや科学知識のレベルの低さ。そして、現在の判例では、この間違った認識である”慣性の法則”が、堂々と通用してしまっているという、日本の司法の低能さを、非常にあきれて、滑稽に思っています。
当然ですが、間違った”慣性の法則”の認識は、今後、正していかねばなりません。
日本交通事故鑑定人協会は、”慣性の法則”を打ち砕く、”正しい飛び石(石はね)の鑑定”をしております。